tener’s diary

てねーるのブログ記事です

【ディズニー映画感想企画第2弾】『ピノキオ』感想~史上最高の名曲を生んだ作品~

 ディズニー映画感想企画第二弾です。本日は『ピノキオ』について書こうと思います。なお、僕はこの『ピノキオ』の映画がめっちゃ大好きです。なんかもう子供の頃の洗脳みたいなもので理屈じゃなくて本能的に「好き!」ってなってるので、記事もわりと熱の入ったものになるかも知れません。
       f:id:president_tener:20190815080135j:plain   f:id:president_tener:20190815080546j:plain

【基本情報】

原作を大幅にアレンジした作品

 初の長編アニメーション『白雪姫』が大ヒットしたディズニーが2作目の長編アニメとして1940年に公開した映画がこの『ピノキオ』です。原作はイタリアの作家カルロ・コッローディによる童話『ピノッキオの冒険』です(1883年出版)。

 前作のディズニー映画『白雪姫』は原作であるグリム童話に比較的忠実なストーリーなんですが*1、『ピノキオ』はかなり原作改変してます。原作ではかなり性格の悪かった主人公ピノキオの性格を比較的マイルドなものに変えたり、原作だとすぐ殺されるコオロギに過ぎないジミニー・クリケットを準主役級のキャラに仕立てたりします。

 ディズニー映画の「原作改変」の伝統はこの映画から始まったと言えるかも知れません。これ以降もディズニーはしばしば原作をディズニー風に大きくアレンジした映画を世に送り出しています。*2

興行的には失敗!?

 今でこそ初期ディズニーを代表する傑作として名高い『ピノキオ』ですが、実はこれが公開された当時の興行成績はあまり良くありませんでした。『白雪姫』以上に莫大な製作費をかけたにも関わらず公開後の客入りが予想を下回ったため、これ以降のディズニーはしばらく経営が苦しくなってしまいます。

 しかし、一方でいわゆる映画評論家からの評判はかなり良く、公開当初から絶賛の大嵐でした。まあ一般に、批評家からの評価と実際の興行成績がかみ合わないことは映画あるあるなんですが、『ピノキオ』に関しては公開時期の運が悪かったという事情も少なからずあります。

 この映画が公開された1940年はヨーロッパですでに第二次世界大戦が始まっていて、そのために国外での売り上げが『白雪姫』に比べて大幅に落ち込んだという事情があります。ようは戦争のせいで海外であまり売れなかったんですよね。

 もちろん、1940年ではヨーロッパはともかくアメリカはまだ戦争に突入してないので*3アメリカではヒットしたのでは?と思った人もいるかも知れませんが、残念ながらアメリカでも興行成績は微妙な結果に終わったんですよね。この原因もウォルト・ディズニー氏は公開時期が悪かったせいだと思っていたらしいです。

 というのも、アメリカではこの『ピノキオ』公開の数週間前にあの有名な映画『風と共に去りぬ』が公開されています。第12回アカデミー賞で作品賞含む8つの賞を受賞した映画史上に残る名作『風と共に去りぬ』に客を奪われたせいで、アメリカでもあまりヒットしなかったのだとウォルトは思ったらしいです。

 もちろんこれらの外的要因だけでなく単純に作品そのものにも売れなかった原因はいくつかあるとは思います。その原因としてしばしば言われるのはやっぱり「雰囲気が暗い」という点でしょうか。後でも述べますが、この映画に対する「子供が見るには陰鬱でちょっと怖い」みたいな感想は公開当時からあったそうです。



【個人的感想】

総論

 前書きでも述べたように、僕個人はこの映画『ピノキオ』を歴代ディズニー映画でも上位5作には入れたいぐらいには好いています。ストーリーからキャラクターから音楽まで全てが愛おしいんですよね。特に音楽がもうホントにホントに大好きです。小さい頃から何度も繰り返し見ては感動した映画が『ピノキオ』です。歳をとってから見直すと結構細かい難点も目に付くようにはなるんですけど、それでも僕の『ピノキオ』が好きという感情は揺るがずに残っています。
 
 そんな訳で、どうしてもちょっと熱い語りになるかも知れないけど『ピノキオ』感想を書きます。

音楽

 『ピノキオ』の魅力を語るうえでどうしても外せないのがやはり音楽です。前作『白雪姫』に引き続き『ピノキオ』にもミュージカル要素はがっつりあります。そして、この『ピノキオ』内で流れる音楽の数々が本当に素晴らしくて僕は大好きなんですよねえ。

星に願いを ~ディズニー史上屈指の名曲~

 『ピノキオ』の音楽の中でも特に有名なのが『星に願いを(When You Wish Upon a Star)』です。というか、『ピノキオ』どころか全ディズニーソングの中でも一番有名と言っても過言ではなさそう。『ピノキオ』を見たことない人でもこの曲だけは知っているという人はきっと多いはず。

 この曲はあまりにも名曲すぎて第12回アカデミー賞で歌曲賞を受賞しただけでなく、その後もディズニーを代表する曲の一つとして使われ続けます。どのぐらいディズニーの代表曲扱いされているかというと、例えば現在ディズニー映画のオープニング映像ではシンデレラ城の映像とともに必ずこの『星に願いを』がBGMとして流れています。この「お約束」は1980年代頃から続いているらしいです。あと、毎年公演されている「ディズニー・オン・クラシック」でもエンディングで毎回必ず『星に願いを』が歌われています。

 このように、完全に「ディズニーを代表する定番中の定番」として扱われている『星に願いを』ですが、実際それだけの名曲であることは聴いた瞬間に実感します。僕は気分が沈んだ時はいつもこの曲を聴くぐらいにはこの曲を愛しています。本当に良い曲です。とにかくもう感動する、としか言いようがありません。

その他の名曲

 もちろん『ピノキオ』には『星に願いを』以外にも名曲がたくさんあります。『星に願いを』が感動的なバラードだからか、他の曲はわりとアップテンポで楽しくなる曲が多いのがこの映画の特徴ですかね。前作の『白雪姫』ではオペラっぽいたっぷりの声量で歌う曲が多かったので、それとはだいぶ対照的です。"Hi-Diddle-Dee-Dee"や"Give a Little Whistle"、"I've Got No Strings"などどれも聞いてると楽しくなってきます。しばしば「雰囲気が暗くて陰鬱」と言われる『ピノキオ』ですが、だからこそその暗い雰囲気を少しでも和らげるために曲はちょっと明るめなものが多いのかもしれませんね。

 なお、僕は特に"Hi-Dilddle-Dee-Dee"が好きです。これも『ピノキオ』の中ではかなり有名な曲の一つで、日本でも東京ディズニーリゾートとかで良くBGMで流れてくるのを聞くので知っている人も多いかも知れません。

 またオルゴール風の音が心地良くてほのぼのした気持ちになれる"Little Wooden Head"みたいな曲もあります。『星に願いを』の冒頭でもこの曲と同じフレーズが使われてたりします。


ストーリーと映像

暗くて陰鬱?

 『ピノキオ』はしばしば「雰囲気が暗い」という感想を送られます。実際、まず映像が全体的に暗めです。それはそもそも夜のシーンがわりと多いせいでもあるでしょう。もちろん夜だからこそ綺麗な映像っていうのもあって、オープニングの星の映像とかはなかなかに神秘的で僕は好きです。

 もちろん雰囲気の暗さには映像だけでなく作品のストーリーも関係してるとは思います。この映画に出てくる悪役って歴代のディズニー・ヴィランズの中でも特に怖いというか、やっている悪行の内容が子供も見るディズニー映画にしては少々エグいんですよね。

 特に、コーチマンのやっていることが子供心にトラウマとなったという意見は良く聞きます。子供をロバに変えて売り飛ばすという完全なる人身売買に手を染めてますからね、彼。しかも、ロバとなって売られていく子供たちがかなり可哀想なんですよね。それまでが手に付けられない悪ガキだったとしても、子供たちが「ママ―」と泣き叫びながらロバに変えられていくシーンは、少し怖くてトラウマものだし、子供たちが可哀想で見ていられなくなるシーンでもあります。

 しかも、この子供たちって最後まで救いがないんですよね……。ピノキオがコーチマンから逃げた後は物語の場面が転換してしまい、ロバに変えられた子供たちは一切出てこなくなるので、その後の子供たちの安否は分からないままです。この点に胸を痛めてしまう人はわりと多い印象です。というか、僕もその一人です。

世界観と映像の面白さ

 『ピノキオ』の舞台はイタリアの田舎町なんですが、僕はこの舞台がわりと好きなんですよね。この映画は主人公ピノキオの冒険譚なので、基本的に出てくる舞台装置がお城と森しかなかった前作の『白雪姫』と違い、物語の舞台は色んな場所へと移ります。

 まず、冒頭のゼペットじいさんの家におけるたくさんの人形やからくり時計たちが動くシーン、ここがめっちゃ楽しくてワクワクする。こういう機械仕掛けのおもちゃの世界の表現の魅力は『トイ・ストーリー』に通じるものがありますね。特に、このシーンはジミニー・クリケット視点で映像が映し出されているので、ミクロな視点でからくり時計やオルゴールが動くのを感じられて、本当に『トイ・ストーリー』っぽさがあります。舞台はゼペットじいさんの家の中に過ぎず狭い世界なんですが、ここからすでに楽しい雰囲気が出ている。

 あとはコーチマンがピノキオを誘惑して連れて行ったプレジャー・アイランドの映像も好き。昔ながらのレトロな遊園地って感じがすごく楽しそう。もちろん、この後に起きる展開を考えると楽しくないというかむしろ怖いんですが、そういう「一見楽しそうだけど実は怖い」っていうのは良くある王道ホラー的な演出であり、その点にも僕は魅力を感じるんですよね。

 そして、特に僕が大好きなのが後半の水中シーンです。クジラに飲まれたゼペットを探すためにピノキオが海に潜るシーンですね。ここはウォルトも力を入れたシーンらしく、後年の『リトル・マーメイド』や『ファインディング・ニモ』を彷彿させるような神秘的で綺麗な海中世界の映像が広がります。僕は小さい頃から海の中の神秘的な映像が大好きで何度も水族館などに足を運んだぐらいなので、『ピノキオ』のこのシーンは僕にとってとりわけ魅力的です。CGも全くない時代に手描きのアニメーションでここまで綺麗に水中の映像を再現したことに対する技術的な感動も当然あります。

 終盤のクジラのシーンもとても迫力があります。ピノキオとゼペットを襲う巨大なクジラが大きな波を立てて襲ってくるシーンの映像はなかなかに見ごたえがあります。特に、波の映像がすごい。


個性的なキャラクター

 『ピノキオ』の魅力として登場キャラが全てちゃんと個性的であることも挙げられると思うんですよね。ちゃんと物語の役割に応じてそれぞれの個性がはっきりと決められて分かりやすく出ている。登場キャラの特徴がはっきりしている点が好きです。

 主人公のピノキオは生まれたばかりで善悪の区別を知らない子供っぽいキャラなのですが、ウォルトの原作改変のお陰で原作のような邪悪さはなくなってるので、あまり嫌悪感を抱くことなく魅力的なキャラとして認識できます。もちろん物語の都合上、ピノキオは‟良心”ジミニー・クリケットの忠告を無視してしばしば羽目を外すんですが、そのピノキオのやんちゃっていうのもようは「学校をサボって遊ぶ」だけのことなので、めちゃくちゃ悪いことしてるという印象はないんですよね。そういうやんちゃを仕出かした時でも、常に父親のゼペットを思いやる気持ちだけは抱き続けてるので、個人的には「まだまだ成長過程にあるけど根っこは無邪気で可愛らしい子供なんだなあ」と微笑ましい感情を抱きます。*4

 ゼペットのキャラも良いですねえ。本当にピノキオを自分の子供として愛しているのが伝わってきます。クジラの腹の中でピノキオと再会するゼペットの嬉しそうな表情は本当に感動します。この二人の絆がちゃんと描けてるからこそ、ピノキオがゼペットをかばって一旦死んでしまうシーンでの悲しみが際立って、ラストのピノキオ復活に対する感動に繋がるんですねえ。僕は涙もろい性格なので、幼少期からこのラストシーンでは何度か泣いてます。

 そして、なんといってもこの映画の名脇役がジミニー・クリケットでしょう。主人公の傍について主人公を見守る名脇役はその後のディズニー映画でも何人か登場しますが、その最初のキャラと言えるかもしれません。最初に「バッジをくれないの?」とブルー・フェアリーに言っていた彼が最後にバッジを貰うシーンは映画としてしっかりオチが付いていて良い味を出してます。ジミニー・クリケットはあまりにも人気が強いのか、その後も他のディズニー作品にちょいちょいゲスト出演してますね。

 あと、ヴィランズ好きとしてはやっぱりファウルフェローとギデオンのコンビも良いですねえ。この映画はわりとたくさんの悪役が登場するんですが、その中でもファウルフェローとギデオンのコンビはディズニーらしいコミカルな悪役コンビとしてなかなか魅力的です。特に、ギデオンはディズニー・ヴィランズにしばしばいる「間抜けな手下キャラ」って感じです。こういうコミカルな三枚目っぽい悪役は個人的に大好きです。


説教くさい物語?

 ここまで『ピノキオ』の魅力を延々と語ってきましたが、敢えてこの映画の難点を挙げますと、『ピノキオ』ってちょっと説教臭いんですよね。ディズニー映画って、分かりやすいはっきりしたテーマを主張する「教訓的な物語」―悪く言えば「説教臭い物語」―がわりと多い傾向にあるんですが、その最初の事例が『ピノキオ』だと思います。前作の『白雪姫』にはその手の説教臭さはあまり感じないです。

 個人的に説教臭い物語自体は別に嫌いではないんですけど、『ピノキオ』の場合はその説教の内容の一部が「学校をサボるな」とか「深夜に玉突きで遊ぶな」とか「煙草を吸うな」とかそういうのなので、あんまり強く賛同できる内容じゃなくて鼻に付くんですよね。まあ、ここら辺は個人的な価値観の問題だとは思いますが、『ピノキオ』で出てくるこれらの説教の内容って、理不尽に厳しい校則の多い学校を彷彿させるような内容ばかりで息苦しさを感じるんですよね。正直、そこまで子供の自由を束縛せんでもええやろ……とは思わなくもない。

 この点は僕が主人公のピノキオにあまり嫌悪感を抱いていない理由とも繋がるんですよね。ピノキオって途中でジミニー・クリケットの忠告を無視して、俳優のスカウトに乗っかったり遊園地で遊びほうけたりするんですけど、ピノキオのそれらの行為が個人的にそこまで悪いことだとは思えないんですよね。でも、この映画では、そういう行動をするピノキオをジミニー・クリケットが「間違っている」とたしなめる。その点の説教臭さが個人的にはいまいち賛同できなくて、もやもやするんですよね。

 とは言え、この作品の最後で現れるメインテーマである「優しい気持ちこそが大切」という部分には個人的に大いに賛同しますし、だからこそ、その優しさゆえにクジラからゼペットを助けたピノキオがラストで本当の人間になれるシーンに対する感動は一際強いものになるんですよね。このラストに繋がるほうのメインテーマでの説教臭さには僕はむしろめっちゃ感動します。先述したように僕はラストシーンで感動して過去何度も泣いてます。その点でも僕はやっぱり映画『ピノキオ』が大好きです。

とにかく僕は大好き

 最後に、繰り返しになりますが僕はやっぱりこの映画『ピノキオ』が大好きです。いつまでも耳に残る名曲、魅力的な登場人物たち、次々と舞台の変わる冒険譚と綺麗な映像、ピノキオの優しさと成長に対する感動……etc、全てが愛おしい作品です。

 公開当時こそ興行的には恵まれなかった映画『ピノキオ』ですが、多くの評論家たちから名作だと絶賛され、今でも色んな人たちからディズニー史上屈指の傑作扱いされるのも納得のクオリティの映画だと僕は思います。皆さんもぜひ一度は見てみてください。






 以上で、『ピノキオ』の感想記事を終わりにします。次回は『ファンタジア』の感想記事を書くつもりです。それではまた。

*1:とは言え、『白雪姫』の映画も原作のグリム童話とはいくつかの点で違いはあります

*2:このようなディズニーの「原作改変」の傾向は、原作好きからはしばしばディズニー批判の根拠に使われがちですが、僕自身はちゃんと面白くしてくれるならば原作改変も全然ありだと思っているのでその点でディズニーを悪く言う気はあまりないです(ディズニー贔屓の人並み感)

*3:アメリカの第二次世界大戦への参戦は翌年の1941年から

*4:逆に、同じ子供っぽいキャラでも他人への残酷さが見え隠れするピーター・パンなんかは僕はあまり好きになれないんですよね。