tener’s diary

てねーるのブログ記事です

【ディズニー映画感想企画第1弾】『白雪姫』感想 ~歴史的意義の大きな作品~

 ということで、ディズニー映画の紹介&感想記事一発目です。前の記事で宣言したように、しばらくはWDAS*1の長編アニメーション作品の紹介と個人的感想を書く記事を連載していこうかなと思っています。
 その企画の一発目である本記事では、WDAS長編アニメーションの最初の作品である『白雪姫』について書こうと思います。
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【基本情報~『白雪姫』の歴史的意義~】

 前の記事ディズニー映画の紹介&感想記事を書くにあたって~ディズニー映画入門~ - tener’s diaryでも触れましたが、『白雪姫』公開以前のディズニーは基本的に『ミッキーマウス』シリーズや『シリー・シンフォニー』シリーズなどの短編アニメーションのみを作っていました。すでにこれらの短編アニメーションで世界的な有名人となっていたウォルト・ディズニー氏の新たな試みが、‟長編”のアニメーション映画の作成でした。
 当時まだアニメーションは短編映画しかなかった時代に、ウォルトは世界で初めてフルカラーの長編アニメーション映画を作ったのです。「世界初の長編フルカラーアニメーション映画」という肩書きゆえ、『白雪姫』はディズニー史のみならずアニメーション全体の歴史や映画全体の歴史にとっても非常に歴史的意義の大きい作品となっています。

 そんな映画『白雪姫』の公開は1937年です。今から80年以上も前にこの映画が作られたと思うと、当時のディズニーの偉業が改めて実感できますね。
 『白雪姫』の歴史的意義は「初の長編アニメーション」という点だけでなく、「初の(コメディーではない)大人向けのシリアスな感動ストーリーのアニメーション」という点にもあります。アニメーションと言えば短編ものしかなかった当時、それらの短編は基本的に子供向けのギャグ全開のコメディー作品が主流でした。それまでディズニーが作っていた『ミッキーマウス』シリーズなども基本的にはそうです。そんな時代にウォルトは「大人が見て感動できるストーリー映画をアニメで作りたい」と思い『白雪姫』を作ったのです。「子供も大人も楽しめること」は今まで続くディズニーの基本コンセプトですが、まさにそのコンセプトはこの映画から始まったともいえる訳です。
 
 初めて尽くしの映画ゆえに制作には結構な費用がかかったそうで、そのうえ制作期間も長引いたので、公開前は「失敗したらどうしよう」という周囲の不安もかなり大きかったそうですが、いざ公開してみたらめちゃくちゃ大ヒットして全ては杞憂に終わったという……ウォルト・ディズニー氏の先見の明がうかがえるエピソードですね。




【個人的感想】

総論

 僕の『白雪姫』に対する感想は「すごいなあ」ですね。「好きだなあ」とか「感動するなあ」ではなくて「すごいなあ」なんですよね。やっぱりこの映画を見ると、真っ先に映像などの技術面におけるその歴史的意義の大きさを実感して「この時代にこんなもの作るなんてディズニーはすごいなあ」と思っちゃうんです。

 逆に言えば、そういう歴史的背景込みでの評価なので、そういうのを抜きにして単体で現代の人の視点で見ると、そこまでものすごく「面白い!」「感動した!」とは思えないのも事実です。とは言え、一般に古い映画を見た時に抱きがちな「当時は斬新だったのかもしれないけど今見ると陳腐でつまらないよ……」みたいな感想を抱くほどの古臭さは『白雪姫』にはあまり感じられないです。今見ても普通に見入って鑑賞することのできる飽きさせない展開の映画になっています。

 現代人の視点で見ると、「ものすごく感激するほどでないけど、かといって決して退屈なつまらない映画でもない」というのが、僕が『白雪姫』を見て素朴に抱いた感想です。

 ……と書くと、貶しているように思われるかも知れませんが、決してそうではありません。80年以上前の映画にもかかわらず古臭さをほとんど感じさせず「今の時代でも普通に飽きずに見れる面白さ」の映画になっている時点で、僕はかなり「すごいなあ」と思うのです。いや、本当にすごいことですよ。『白雪姫』よりももっと後の時代に作られた作品でも『白雪姫』より遥かにつまらないと感じる作品はたくさんありますもの。そう考えると、この映画が歴史的名作扱いされているのも頷けます。
 そういう訳で、僕がこの映画に対して感じる感情はやっぱり「すごいなあ」の一言に集約されるんですよね。

 以下、各論で個人的にこの映画の見どころだと思った点や逆に気になった点など雑多に書き連ねます。


映像面

滑らかな動き

 ディズニーアニメーションの特徴として、しばしば「徹底的なリアリティーのある映像の追及」が挙げられますが、その特徴はこの『白雪姫』でもかなり明確に現れていると思いました。いわゆるディズニーアニメ特有の「ぬるぬると本当に生きているかのように滑らかに動く絵」は、この映画のキャラクターにもしっかり現れています。

 実際、初の長編アニメーション映画としてリアルなアニメーション映像を『白雪姫』で実現するために、制作現場では俳優を何人も起用して映画内での各シーンにおけるキャラクターの動きを実際に彼らに演じてもらい、それを撮影することでアニメ作成の参考にしたらしいです。人物の動きだけでなく動物の描写にも同じようにリアリティを追求し、実際に生きた動物をアニメーターたちに観察させたらしいです。

 これらの努力のお陰で、『白雪姫』は後につながるディズニーアニメの特徴たる「リアルで滑らかな動き」を決定づけた作品と言えます。

意外と怖い?

 ところで、ディズニーアニメというと何となく「キラキラしてる」「華やかな」イメージを持っている人が多いですが、そのイメージとのギャップからか、『白雪姫』を見た人の感想としてしばしば「意外と映像が暗くて怖い」「おどろおどろしい雰囲気の映像で驚いた」という声を良く聞くことが多いと多いです。

 特に、序盤の「白雪姫が暗い森に逃げ込むシーン」と中盤の「女王が物売りの老婆に変身するシーン」における映像の怖さが、この作品のホラー感を際立たせてるんだと思います。

 こういう妙に怖いシーンがあるのは初期ディズニーの特徴なんですが*2、『白雪姫』もその例に漏れずいくつか怖いシーンがあったんですね~。

 怖がらせるべきシーンではしっかり怖い映像を映したからこそ、作品全体に適度な緊張感が生まれ、観客を物語の世界に入り込ませることに成功したとも言えるでしょう。


音楽

 ディズニー映画の際立った特徴として「ミュージカル要素」があることを挙げる人は多いでしょう。実際、全てのディズニー映画ではないにしろかなりの数のディズニー映画がミュージカル仕立てになっています。

 初のディズニー映画である『白雪姫』もその例に漏れずミュージカル映画になっています。短編アニメ制作の時代から「アニメと音楽の融合」に心を砕いて来たウォルトは当然『白雪姫』でも音楽に強く拘り、そんなウォルトが『白雪姫』をミュージカル映画にすることに決めたのも自然なことでしょう。初のディズニー長編である『白雪姫』がミュージカル要素満載の映画だったことが、その後のディズニーの「ミュージカル志向路線」の風潮を決定づける契機になったのかもしれないですね。

 実際、『白雪姫』にはミュージカル映画として今でも耳に残る有名な曲がたくさん出てきます。特に、「いつか王子様が」と「ハイ・ホー」の2曲は、ディズニーオタクか否かに関わらず誰もが知っている超超超超有名な曲でしょう。僕はこの2曲はどっちも大好きで、ふと気分が乗った時には何度も聞いてるぐらいです。

 この2曲以外にも"Whistle While You Work"(口笛吹いて働こう)や"I'm Wishing"(私の願い)など、この映画にはたくさんの素晴らしいミュージカルソングが登場します。こういうミュージカルシーンでの音楽の良さは以後のディズニー映画にも当てはまる特徴で、僕がディズニーに強く魅かれる大きな主要因の一つでもあります。


ストーリー

意外とみんな知らない?

 ディズニー映画『白雪姫』はもちろんグリム童話がその原作であり、多くの人にとっては「だいたいのストーリーは知ってるよー」と思うかもしれません。実際、「意地悪な継母の女王が白雪姫の美しさを妬み毒リンゴで殺そうとする」「毒リンゴで眠った白雪姫が王子様のキスで目覚める」という基本ストーリーは誰もが知ってるでしょう。

 ディズニー版『白雪姫』でもその基本ストーリーは変わりないんですけど、作品全体を見ると、それらのシーンだけでなく白雪姫と森の動物たちや7人の小人たちとの交流シーンがかなり多いことに気が付く。特に物語の後半は白雪姫と小人が心を通わせていく交流シーンに物語の重点が移っているので、映画を見るまで小人がそんなに重要キャラだと思ってなかった人は意外に思うことが多いそうです。

7人の小人

 で、その小人たちなんですが、彼らがこの作品の準主役なんですよ。そもそもこの映画は邦題こそ『白雪姫』ですが原題は"Snow White and Seven Dwarfs"であり、しっかりと"Seven Dwarfs"―つまり7人の小人―の存在がタイトルで強調されてるんですよね。つまり制作サイドも7人の小人を主人公の白雪姫と並ぶ重要キャラとして強調させている。

 実際、7人もいるにも関わらずこの小人たちはそれぞれがしっかりと個性あるキャラクターになっててその点ではなかなか魅力的な登場人物に仕上がっています。特に、三枚目枠のドーピー(おとぼけ)とツンデレ枠のグランピー(おこりんぼ)のキャラが僕は好きです。グランピーの白雪姫に対する態度は典型的なツンデレのそれで、見てて微笑ましくなりますね。
 
 ただ、小人たちと白雪姫のそういう交流シーンはそういう微笑ましくて楽しい面もあるんですが、メインのストーリーである「毒リンゴで眠り王子様のキスで復活」を知っていると、小人たちのシーンはその山場のストーリーの進行に関わる場面ではないので、個人的にはちょっと中だるみしたなあと感じなくもないんですよね。

 食事の前に手を洗うかどうかでひと悶着するシーンとか単体で見ると微笑ましくはあるんだけど、正直そういうシーンがあまりにも延々と続くと少し退屈で、「早く老婆が毒リンゴを渡しに来ないの?」とか思うことはありました。もちろんこの交流シーンがあるからこそ、後で小人たちが白雪姫を助けるために急いで魔女を追いかけたり、白雪姫の死に涙し悲しんだりするシーンが際立つので必ずしも作劇上無駄なシーンってわけではないんですけどね。
 それでも自分にはこれらのシーンが長すぎて少し退屈だなとは思いました。もう少し短ければ「微笑ましいなあ」で終わったんだけど、それだと長編にしては短すぎることになっちゃうし難しい……。

王子の空気感

 これは色んな人の感想で言われていることなんですが、この映画においてどうしても王子は空気になります。先述の通り、この作品はその多くのシーンを「白雪姫と小人たちとの交流」に割いてるので、どうしても「白雪姫と王子との間のロマンス」よりも「白雪姫と小人たちとの絆」のほうが作品のメインテーマとして目立つんですよね。だからこそ、最後に白雪姫が復活するシーンでは「いや、そこは王子じゃなくて小人たちに活躍させてあげたほうが良いんじゃないの?」という思いがどうしても出てきてしまいますよね。

 そもそも王子の登場シーンが圧倒的に短いんですよね。序盤の「白雪姫にいきなり愛の告白するシーン」と最後の「白雪姫にキスするシーン」以外は全然出てこない。これじゃあ「空気」って言われるのも仕方ないですよ。王子のキャラが良く分からない。7人それぞれの個性がはっきり描かれている小人たちとはその点が対照的ですね。そんな空気の王子がいきなりラストの山場だけ掻っ攫っていくのがこの映画の数少ない欠点とは言えそうです。僕も初めて見た時から同じ感想を抱いています。

それでもやっぱり「すごい」

 ここまでストーリーについてちょっと難点ばかり挙げてしまいましたが、それでも僕は『白雪姫』のストーリーは決して悪くないと思っています。もちろん、80年以上前のディズニーの王道映画なので、今見ると多少古臭かったり陳腐に感じるシーンもありますけど、決して終始退屈させるような作品にはなってないです。

 その要因はやっぱり、「狩人に出会い森に逃げるシーン」や「小人たちとの出会い」、「女王の変身シーン」「小人たちと女王の戦い」などなど要所要所でしっかりと盛り上がる場面を用意してくれる脚本のすごさにあると思います。そういう点でも、僕にとって『白雪姫』はやっぱり「すごいなあ」と思わされる作品なんですよね。







 という訳で、ディズニー映画紹介&感想企画第1弾として今回は『白雪姫』を取り上げました。やっぱり歴史的意義の非常に大きい作品なので皆さん一度は見て損はないと思いますよ。
 次回は『ピノキオ』の感想を書こうと思います。それではまた。

*1:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの略。詳しくは前の記事 ディズニー映画の紹介&感想記事を書くにあたって~ディズニー映画入門~ - tener’s diary をご参照ください

*2:ピノキオ』は全編通して怖いって感想を良く聞くし、『ダンボ』でもピンクの象のシーンはしばしばディズニーのトラウマシーンの一つとして挙げられがちです