tener’s diary

てねーるのブログ記事です

【ディズニー映画感想企画第29弾】『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』感想~黄金期なのに不遇な作品~

 ディズニー映画感想企画第29弾は『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』の感想記事を書きます。時期的には第二期黄金期に含まれてるにも関わらず、一般的な知名度はものすごく低い作品でもありますね。そんな『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』について語っていきたいと思います。

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【基本情報~第二期黄金期の失敗作?~】

 『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』は29作目のディズニー長編アニメーション映画として1990年に公開されました。タイトルから分かる通り、1977年に公開された23作目のディズニー長編アニメーション映画『ビアンカの大冒険』の続編となっています。ディズニーが完全な長編アニメーション映画として続編を公開したのは本作品が初めてとなります。*1

 前の記事で述べた通り、前作『リトル・マーメイド』の大ヒットによってディズニーは第二期黄金期を迎えることになり、本作品も時期的には第二期黄金期に含まれています。しかし、それにもかかわらずこの『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』は興行的にはいまいちな失敗作となってしまいました。アメリカでは前作『リトル・マーメイド』ほどの興行収入を稼ぐことができず、そのせいなのか日本では劇場公開が見送られてしまいました。

 しかも、その後ディズニーは『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』と次々と大ヒット作を公開していくことになるので、『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』は現在でもそれらの大ヒット作品たちの陰に隠れて、目立たないマイナー作品扱いを受けています。第二期黄金期の作品群を語るとき、「『リトル・マーメイド』で始まって、次に『美女と野獣』でさらにヒットして~……云々」って感じでさり気なく『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』の存在を抜かして語る人が多いんですよねえ。そんな可哀想な扱いを受けてる作品です。

 本作品がアメリカで流行らなかった要因は色々考えられますが、ひょっとしたら新作ではなく続編であったことやミュージカルではなかったことが関係してるのかも知れません(あくまでも僕の個人的な予想ですが)。前々作『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』や前作『リトル・マーメイド』でミュージカル映画としてのディズニーが復活してきた時代において、ミュージカル要素が皆無な本作品は当時のアメリカ人の需要に合ってなかったのかも知れません。そのうえ、13年も前の続編を今更作られてもピンと来ない人が多かったのかも知れません。普通に新作アニメーションが見たいと思ってしまう人も多かったのかも知れません。

 まあ、これらの要因はあくまでも僕の個人的な憶測にすぎませんが、とにもかくにも『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』は第二期黄金期に含まれる作品なのにも関わらず、興行的に失敗し現在に至るまで知名度の低い作品となってしまったのです。




【個人的感想】

総論

 上で述べた通り、第二期黄金期にも関わらず不遇な扱いを受けている本作品ですが、僕は普通に「面白い」作品だと思ってます。ぶっちゃけ1作目の『ビアンカの大冒険』よりもこっちの続編のほうがクオリティ高くて良作だと思います。『ビアンカの大冒険』は第二期黄金期に入る前の暗黒期の作品だったこともあってか、どことなく「暗い」雰囲気が出てるんですが本作品にはそういう暗さは全く見られないです。ストレートに面白い「冒険アクション映画」になっています。

 なんでこれだけが第二期黄金期の作品の中でやたら知名度が低いのか不思議で仕方がないです。ミュージカル映画ではないので、楽しくなるような劇中歌こそないですが、純粋にアクション映画として面白いエンタメ作品に仕上がってると思います。結構好きな作品です。


豊富な冒険とアクションシーン

 本作品の魅力は何といってもアクションシーンの多さと面白さだと思います。オーストラリアの大自然を舞台に、ハラハラして動きのある楽しいアクション映像がたくさん見られるんですよね。この作品のアクションの重ね方はなんとなく『インディ・ジョーンズ』シリーズを彷彿させるんですよね。まあ、そもそもジェイクとかいう新キャラクターが明らかにインディ・ジョーンズを意識した設定になってますからね。だから、見てる間も自然と『インディ・ジョーンズ』シリーズを意識しちゃうんですが、実際『インディ・ジョーンズ』シリーズと似たような面白さが本作品にはあります。『インディ・ジョーンズ』シリーズの魅力って、色んな場所を冒険する楽しさとアクションシーンの面白さ、そして登場人物たちのコミカルな掛け合いにあると思うんですが、この『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』にもこれらの要素が入ってるんですよね。

 特に冒険のスリルとアクションシーンの豊富さは、1作目の『ビアンカの大冒険』をはるかに凌ぎます。『ビアンカの大冒険』では序盤はミステリー風の捜査パートが続いており、少々盛り上がりに欠けていたのですが、『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』では序盤からいきなり少年コーディの冒険アクションが見られ、めちゃくちゃ楽しいです。罠に捕まったゴールデン・イーグルのマラフーテを助け出し、彼女と一緒にオーストラリアの大自然の中を飛び回る映像は圧巻ですよ。こういう興奮する見せ場を序盤からいきなり見せてくれるのは素晴らしいですね。

 中盤でもコーディはマクリーチに捕まった動物たちと一緒に協力して鍵を取って脱出を図るなど、なかなかに緊張感のある活躍を見せてくれています。この作品は、王道冒険活劇にありがちなこういうハラハラするシーンがきちんと用意されてるんですよね。だからこそ、視聴者も手に汗を握りながら見ることができる。


終盤の怒涛のアクション

 緊迫感あるアクションシーンは終盤で一気に増えます。終盤からの怒涛の展開はマジで『インディ・ジョーンズ』シリーズっぽさを感じます。まず、マクリーチの車に乗り込んだビアンカとバーナードがタイヤに挟まれそうになるシーンがあるんですが、ここもなかなかに緊迫感あって楽しいです。

 その後バーナード以外のメンバーが全員マクリーチに捕まってしまうという絶体絶命のピンチが生じてからのバーナードの怒涛の活躍もとても楽しいです。1作目の『ビアンカの大冒険』ではあまり活躍した印象のないバーナードですが、本作品ではわりと頼もしさを見せてくれてます。ジェイクの真似をして野ブタを操って、マクリーチから鍵を奪い、ジョアンナから逃げ回るシーンの緊迫感は見事としか言いようがないです。ビアンカとジェイクが頑張って鍵を開けてる間に、ワニの川に落ちたコーディをバーナードが頑張って助けようとするシーン、その後何とか脱出の間に合ったマラフーテによってコーディとバーナードが助けられるシーン……と息をつかせる暇もなく次から次へとスリル満点のアクションが続くので、本当にずっと興奮して見ていられます。

 1作目『ビアンカの大冒険』でも終盤でもヴィランズとの戦うアクションシーンはありましたが、あれはわりとドタバタコメディ感の強いアクションシーンでした。それに対して本作品のアクションはしっかりとハラハラさせる王道冒険アクションになってるんですよね。そういう点でも『インディ・ジョーンズ』シリーズの終盤のアクションに近いものを感じさせます。本当に面白いです。*2


バーナードの恋物語

 本作品は「コーディの救出」というメインのストーリー軸とは別に、「バーナードの恋物語」としての側面もあり、その点も魅力的に働いてました。恋のライバルキャラとしてジェイクが新登場する中、バーナードがいかにビアンカに格好良いところを見せ告白できるのかという点も、物語のもう一つの軸になっていて、この点が非常に面白く作用してましたね。

 この『ビアンカの大冒険』シリーズは良くある王道の「男女のバディもの」になっており、その点が面白いんですよね。勝ち気で積極的に行動していく女性と、それに必死について行くヘタレでコミカルな男性という組み合せは、『キム・ポッシブル』シリーズを彷彿とさせるコンビだと思います。ビアンカキム・ポッシブルで、バーナードがロン・ストッパブルに相当しますね。こういう典型的な「男女のバディ」って感じのキャラ設定がとても魅力的なんですよね。

 本作品では、そんなキャラの魅力を生かして、彼らの物語をさらに掘り下げるために「バーナードのビアンカへの恋心」を新たに描写しています。単なる「コーディ救出」だけがテーマの物語だったら、1作目の『ビアンカの大冒険』とほとんど同じになっちゃうので、新たに「レギュラーメンバーの恋愛事情掘り下げ」という要素を入れたのは上手いですね。まあ、そういう掘り下げ自体はシリーズものの続編では良くあるベタな王道ではあるんですが、そういう王道だからこそ本作品も面白い続編に仕上がってるんだと思います。

 明らかな恋敵キャラとしてジェイクを登場させる辺りもベタではあるんですが、それがきちんと本作品の面白い要素として機能してるんですよね。ジェイクの登場にちょっと危機感を抱く中盤のバーナードのキャラが可愛らしくて好きです。こういう要素がきっちり盛り込まれてるからこそ、終盤のアクションシーンでバーナードがジェイク顔負けの怒涛の活躍を見せる展開が光るんですよね。「おお!バーナードやるじゃん!」って思えて素直に嬉しくなる展開だと思います。

 そりゃ、これだけ格好良い活躍を見せたんだからラストでビアンカがバーナードの告白を受け入れるのも納得です。それをちゃんと認めるジェイクの器の広さも格好良くて好きですね。少しヘタレで臆病な性格のバーナードが最後に頑張って活躍するからこそ、爽快感のあるラストになってるんだと思います。ああー、すごーく王道って感じがして好きだなあ。素直に面白いです。


魅力的なキャラクターたち

ビアンカ&バーナード&ジェイク

 本作品は登場キャラがどれも魅力的な描かれ方をしてる点も素晴らしいんですよね。先述の通り、ビアンカ、バーナード、ジェイクの三角関係がまず面白いです。このメインキャラクター三人組はそれぞれちゃんとキャラが立ってるから魅力的なんですよね。だからこそ、「コーディ救出」というメインの物語とはまた別に、この三人の恋愛模様の行方も十分に気になりながら見ることができるんですよね。

 特に、恋敵キャラのジェイクはインディ・ジョーンズみたいな格好とアクションを披露する頼もしいキャラとして描かれています。だからこそ、彼にビアンカがとられるんじゃないかと危機感を抱くバーナードの気持ちが理解できるんですよね。途中までは、ジェイクのほうがバーナードよりも普通に活躍してるもん。特に、中盤で巨大なヘビを従えるシーンはジェイクの最大の見せ場ですね。この見せ場シーンがあるからこそ、このシーンを参考にしたバーナードが終盤で野ブタに対して同じことをして、結果としてジェイク顔負けの活躍を見せる展開が輝くんですよね。わりと上手い伏線だと思います。

コーディ

 この作品は前半までは明らかにコーディのほうが主人公になってます。それぐらいコーディの見せ場が多いです。上述の通り、最初はコーディの冒険シーンから物語が始まってますからね。彼がゴールデン・イーグルのマラフーテと会い交流を深め、その後マクリーチに捕まるシーンまでの間、本来の主人公であるビアンカとバーナードは一切出てきません。その間は完全にコーディの物語として展開が進んでいきます。だからこそ、僕らはコーディに対してももう一人の主人公として感情移入しながら見ることができるんですよね。

 彼は、少年漫画の主人公みたいな性格です。勇敢で正義感に溢れ、動物たちと協力して檻からの脱出を図るなどの活躍も見せるコーディ君は、まさに「もう一人の主人公」にふさわしいキャラだと思います。ビアンカとバーナードを脇役に添えて、彼を主人公とした『グーニーズ』的な‟ティーンの冒険物語”にしても良かったんじゃないかと思えるぐらいです。それだけ格好良くて主人公らしい勇敢な少年として描写されています。

ウィルバー

 1作目の『ビアンカの大冒険』に登場したアホウドリのオービルの弟です。飛行機兼パイロットという設定だし、明らかに有名なライト兄弟が名前の由来になってますね*3。本作品のギャグ要員となっています。中盤でのぎっくり腰の治療など、本作品におけるギャグシーンを専ら担当しています。コミカルな三枚目としてなかなかに面白い魅力的なキャラだと思います。

 まあ、このぎっくり腰の治療シーンは本筋に関係ないギャグシーンにしてはちょっと長いので、個人的には少し冗長なシーンに感じなくもないのですが……。終盤のギャグシーンは面白かったので良かったです。みんながマラフーテの背に乗って帰ったエンディングの後に、ウィルバーがまだマラフーテの卵を守ってる様子が映し出されるオチは、ベタではありますが面白いギャグになっています。ちょっとクスッとします。何だかんだでバーナードの頼みをちゃんと聞いて卵を守ってあげてるウィルバーのお人よしっぷりが可愛らしくて好きです。

ヴィラン

 本作品はヴィランズもなかなかに魅力的です。マクリーチはシリアスな悪人さとコミカルな間抜けさを程よいバランスで併せ持った名悪役だと思います。幼児誘拐&殺人未遂までをも行うガチの犯罪者であり、そういうシリアスな怖さのある悪人ではある一方で、ペットのジョアンナとの漫才を通してコミカルさもきっちり描写されてる点が素晴らしいです。下手したら『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』のサイクスのような純度100%の悪人になってしまい、ディズニー映画にしてはエグすぎるキャラになってしまうところを、ジョアンナとのコミカルなシーンの挿入によって上手く緩和してます。基本的に狡猾な悪人なのにちょいちょい間抜けな描写も見えるから良いんですよね。素晴らしい名悪役です。

 そんなマクリーチのペットであるジョアンナもかなり良いキャラだと思います。ディズニー・ヴィランズの手下らしい適度な間抜けさもある一方で、わりと優秀な活躍も見せてくれてるので、物語に適度な緊張感を生み出しています。コーディの檻からの脱出を邪魔したり、鍵を奪ったバーナードを追いかけまわしたりと、ちゃんと優秀な働きを見せてるシーンもあるんですよね。食いしん坊な性格も可愛らしくて好きです。


綺麗な映像

 本作品では前作『リトル・マーメイド』以上にCGがふんだんに使われています。当時のディズニーのCGはCAPSと呼ばれる技術を使ってたのですが、『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』はそのCAPSを作品内の全てで使用した初めての作品だそうです。あまりこの技術について詳しいことは僕も知らないのですが、ようはコンピューター上で自由に作画できるようになったらしく、その新技術の成果なのか本作品ではオーストラリアの大自然の綺麗な映像が至る所で見られます。

 まず、オープニングからしてそうです。豪華な音楽に合わせてオーストラリアの草原とたくさんの岩肌が映るシーンには圧倒されます。そして、先述した通りコーディがマラフーテと一緒にオーストラリアのど真ん中を飛び回るシーンも圧巻です。ディズニーシ―の新アトラクション「ソアリン」が好きな人なんかは、マラフーテのこの飛行シーンにもきっと興奮するんじゃないでしょうか。映像を見てるだけで自分たちも本当に空を飛んでるような気分になります。オーストラリアの広大な自然の映像も綺麗で素晴らしいですよ。

 マラフーテの飛行シーンはラストでも見られます。前半と違ってこっちは夜の飛行なので、前半の飛行シーンとはまた違ったエモさがあります。真夜中の雲の上を飛び回るシーンはとても興奮します。第二期黄金期のディズニーらしい豪華な音楽もあいまって、とても壮大で圧倒される素晴らしいエンディングになってると思いますね。大好きです。


これも立派な黄金期の作品

 ここまで語って来たように、この『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』も第二期黄金期の作品に入るにふさわしいクオリティは十分ある作品だと思います。普通に面白い冒険活劇になっています。『ビアンカの大冒険』のような変な暗さもなく、アクションの盛り上がりは激しいし、映像もめちゃくちゃ綺麗なので、1作目の『ビアンカの大冒険』の面白さをはるかに上回る面白い続編に仕上がってると思います。

 確かに、第二期黄金期の他のディズニー映画のようなミュージカル要素こそありませんが、BGMは『インディ・ジョーンズ』シリーズを彷彿とさせるような豪華でワクワクするメロディになってるので、音楽で大きく劣ってるとも思えません。当時のアメリカでヒットしなかったのが不思議で仕方がないと言いたくなるぐらいの面白さです。

 個人的には、この作品も「ちゃんと立派な第二期黄金期の作品だ!」と言えるぐらいの面白さはあると思っています。最初にも述べましたが、僕はわりと好きな作品ですね。








 以上で、『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』の感想記事を終わりにします。次回は『美女と野獣』の感想記事を書く予定です。それではまた。

*1:正確なことを言うと、第二次世界大戦中に公開された『三人の騎士』もその前作『ラテン・アメリカの旅』の続編になってるのですが、この2作は厳密にはオムニバス形式の短編集映画なので、短編集の形ではない普通の長編アニメーション映画の続編は、この『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』が初です。

*2:1作目『ビアンカの大冒険』も宝石探しのシーンは『インディ・ジョーンズ』シリーズっぽいなとは思いましたけどね。

*3:飛行機の発明で有名なライト兄弟の名前はそれぞれオービル・ライトとウィルバー・ライトなので。