tener’s diary

てねーるのブログ記事です

【ディズニー映画感想企画第28弾】『リトル・マーメイド』感想~本格的な第二期黄金期の始まり~

 ディズニー映画感想企画第28弾は『リトル・マーメイド』の感想記事を書こうと思っています。しばらく暗黒期のマイナーな作品が続いていましたが、この作品は非ディズニーオタクでも知ってる超有名作品でしょう。これ以降、しばらくは有名なディズニー作品が続くはずです。
 そんな『リトル・マーメイド』について語っていきたいと思います。

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【基本情報】

久しぶりのプリンセスもの

 『リトル・マーメイド』は1989年に28作目のディズニー長編アニメーション映画として公開された作品です。原作は有名なアンデルセンによる童話『人魚姫』です。ディズニーがプリンセスもののヨーロッパ童話をアニメ化したのは実に30年ぶりのことです。一般的にディズニーと言えば「ヨーロッパの童話を原作としたプリンセスもの」というイメージが強いかもしれませんが、実は30年もの間ディズニーではそのようなアニメは制作されていなかったのです。『リトル・マーメイド』の前のプリンセスもののディズニー映画は、1959年公開の『眠れる森の美女』まで遡ります。

 そもそも、ウォルト・ディズニー存命時代には「ヨーロッパの童話を原作としたプリンセスもの」のディズニー映画はわずか3作しか作られていません。『白雪姫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』の3作だけです。ウォルト存命時代に19作もの長編アニメーション映画が作られたにも関わらずそのうちわずか3作しかないのです。そして、ウォルト死後の暗黒期にはプリンセスものディズニー映画は一作たりとも作られていません。そう考えると、現在の我々が抱く「ディズニーと言えばプリンセスもの」というイメージは決してこの時代までのディズニーには当てはまらないことが分かるでしょう。

 決してプリンセスものばかりでなかったそれまでのディズニーの方針を転換して、プリンセスもののディズニー映画を全面に推したのが第二期黄金期の特徴の一つです。この『リトル・マーメイド』以降、『美女と野獣』『アラジン』とディズニーは立て続けにプリンセスの登場する物語を映画化してきました。そういうディズニーの新しい流れの契機となった作品が『リトル・マーメイド』だったのです。


アラン・メンケン氏の参加

 前の記事で述べた通り、前作『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』では第二期黄金期に繋がる様々な新しい試みが行われました。それらの試みはこの『リトル・マーメイド』でももちろん行われています。その中でも特に重要なのが「ミュージカル路線の拡充」です。『リトル・マーメイド』でもたくさんのミュージカルシーンが取り入れられ、「ミュージカル映画」としてのディズニー映画のイメージが確固たるものになったのです。

 『リトル・マーメイド』ではこのミュージカル要素を充実化させるために、当時ブロードウェイで名を馳せていた作曲家アラン・メンケン氏を作曲担当として採用しました。彼はすでに前作『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』からディズニー映画制作に携わっていたハワード・アシュマン氏とコンビを組み、たくさんの劇中歌を『リトル・マーメイド』のために作曲しました。この「作曲:アラン・メンケン&作詞:ハワード・アシュマン」という黄金コンビは、ディズニー第二期黄金期の初期の名曲たちを作ったコンビとして知られています。

 このコンビは当時すでに『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』というミュージカル映画*1の作詞作曲を手掛け成功に導いたことで名が知られていました。そんなハワード・アシュマンとアラン・メンケンのコンビをディズニーがこの『リトル・マーメイド』の音楽制作に採用したことで、ミュージカル映画としてのディズニーの復活がここに確定したのです。なお、ハワード・アシュマン氏はその後エイズにかかってしまいこの数年後に亡くなってしまうのですが、アラン・メンケン氏は2019年9月現在もまだ存命で、現在に至るまでたくさんのディズニー音楽の作曲を手掛けています。


第二期黄金期を支えた人たち

 これまでの記事で述べた通り、『きつねと猟犬』以降のディズニー・スタジオでは新世代のアニメーターが台頭していました。その中でも特に有名なのはジョン・マスカー氏とロン・クレメンツ氏のコンビでしょう。この二人は前々作『オリビアちゃんの大冒険』でも初めてタッグを組んで監督を務めましたが、この時はこの二人以外にもバーニー・マッティンソン氏やデイヴ・ミッチェナー氏も監督を務めていました。ジョン・マスカー&ロン・クレメンツの二人だけで監督を務めたのはこの『リトル・マーメイド』が初となります。

 つまり『リトル・マーメイド』は、ジョン・マスカー&ロン・クレメンツやアラン・メンケン&ハワード・アシュマンという二つの新しいコンビができたディズニー映画でもあるんですね。このコンビはどちらもディズニー第二期黄金期の繁栄を支えた存在として、今でも多くのディズニーオタクの間で尊敬されています。

 もちろん、彼らだけでなくマイケル・アイズナー氏やジェフリー・カッツェンバーグ氏のような指導者として第二期黄金期を率いた人もいますし、グレン・キーン氏のように作画の面で貢献した人もいます。そのような多くのクリエイターたちに支えられる形で、『リトル・マーメイド』以降のディズニーは第二期黄金期を迎えることになるのです。


ディズニー・ルネサンスの成功

 『リトル・マーメイド』は1989年に公開されると爆発的な大ヒットを記録しました。前作『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』も興行的には大成功でしたが、『リトル・マーメイド』の興行的成功はそれ以上のものでした。当時のライバルであるドン・ブルース氏の新作アニメーション映画『天国から来たわんちゃん』の興行収入も大きく上回る歴史的な大ヒット作品となりました。

 批評家からの評判もかなり好調で、特に音楽に関しては、主題歌の一つ"Under the Sea"がアカデミー歌曲賞を、作曲担当のアラン・メンケン氏がアカデミー作曲賞を受賞するなど、ものすごく高い評価を受けました。このように、『リトル・マーメイド』はアカデミー賞を受賞するぐらいの歴史的大ヒット作品となったのです。

 この『リトル・マーメイド』の大ヒットをきっかけに、それまでの長きに渡る暗黒期からディズニーは完全に抜け出し再びアニメーション業界の王者に君臨したため、これ以降の時期は俗に「第二期黄金期」または「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれています。「ルネサンス」とはヨーロッパが暗黒の中世から抜け出し古代ギリシャやローマの栄光を取り戻した文化運動を指す歴史用語ですが*2、それと同様にディズニーも長い暗黒時代から抜け出して第一期黄金期の頃のような繁栄を再び謳歌することとなったのです。まさに「ディズニーの完全復活」と言えるでしょう。

 前々作『オリビアちゃんの大冒険』や前作『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』で徐々に回復の兆しが見えていたディズニーは、この『リトル・マーメイド』の記録的大ヒットを通してようやく誰の目から見ても明らかに「完全復活したな」と言える状態になったのです。そういう意味で『リトル・マーメイド』はディズニーの歴史において大きな節目となる非常に重要な作品だと言えるでしょう。





【個人的感想】

総論

 ということで、第二期黄金期の本格的な到来を告げる『リトル・マーメイド』ですけどね、はい、もう文句なしの名作です。傑作です。あまりにも完璧な傑作すぎて、わざわざ何か感想を書くことがあるのかと悩んでしまうぐらいの名作です。この作品から第二期黄金期が本格的にスタートすると言われているのも納得のクオリティです。ストーリーもキャラクターも映像も音楽も全てのクオリティが非常に高くてめちゃくちゃ感動します。マジで欠点が何もない完璧すぎる作品だと思っています。

 という訳で、以下僕が『リトル・マーメイド』で素晴らしいと思ってるところを片っ端から書いてきます。


完璧なストーリー

 『リトル・マーメイド』の素晴らしさの一つは何といってもストーリーの面白さでしょう。最初から最後まで終始飽きることなく画面に釘付けになりながら物語に入り込めるようなストーリー構成になっています。無駄に冗長なシーンが一つもないんですよね。かといって、展開がスピーディーすぎる訳でもない。このちょうど良いスピードで物語が展開していく点は本当に上手いなあと思います。

 人間界に興味を持つアリエルのキャラ紹介、父トリトンとの確執、王子エリックとの出会い、魔女アースラとの取引……etcと童話の王道展開が完全に無駄なく進んでいってます。その一つ一つのシーンではきちんと丁寧に各キャラクターの心情や考えが描写されているので、視聴者はそれに感情移入しながら見ることができる。

 また、本作品では最初から最後まで一貫してアリエルを主人公として描いており、それゆえに一本筋の通った分かりやすい物語になってると思います。この点は第二期黄金期の特徴だと思います。例えば『白雪姫』では小人が、『シンデレラ』ではジャックとガスなどの動物たちが、『眠れる森の美女』では妖精たちが、それぞれ準主役級のキャラクターとして動いており、終盤では彼らの活躍シーンもかなり多いです。それに対し、『リトル・マーメイド』ではフランダーやセバスチャン、スカットルなどの味方キャラはいるものの、あくまでも物語を動かす中心人物はアリエルとして描かれているように感じます。

 彼女が自らの意志で人間と積極的に関わることを選び、エリックを助け出し、魔女アースラと取引するんですよね。終盤は周りに助けられた感も強いですが、それでも巨大化したアースラの登場以降はエリックとアリエルの二人がアクションの中心にいます。このように、『リトル・マーメイド』はきっちりと「プリンセスが主人公の物語」として描かれてるから、僕らは最後まで主人公のアリエルに感情移入しながら鑑賞することができるんだと思います。この点は本当に素晴らしいです。


演出の上手さ

 本作品は面白い王道ストーリーに応じた演出の仕方もかなり上手なんですよね。盛り上がるべきシーンではきっちり盛り上がり、感動すべきシーンではしっかりと感動させるような豪華で壮大な演出がなされています。その演出の仕方一つ一つにものすごく手間をかけているのが伝わります。

 例えば、エリックが嵐に会うシーンやトリトンがアリエルのコレクションを全て破壊するシーンでは、かなり動きの激しい映像と危機感を煽る音楽が流れます。終盤で巨大化したアースラが海を操るシーンもそうです。特にこの終盤のアクションシーンの迫力は本当に圧巻だと思いますね。面白いディズニー映画には迫力あるアクションが必ずあるものです。本作品では、その迫力が今までのディズニー映画とは桁違いです。巨大化するアースラが海を荒らす映像はあまりにもすさまじくて、終始ハラハラした気持ちで見ることができます。

 このような迫力あるシーンもある一方で、感動的なエモいシーンの盛り上げ方も上手いんですよね。嵐から助かったばかりのエリックがアリエルを見つめるシーンや終盤の結婚式のエンディングなど、後述する"Part of Your World"の音楽の素晴らしさもあってとても感動してしまいます。特に僕はこのエンディングシーンでの豪華な音楽と「大団円」って感じの結婚式の雰囲気が大好きですね。

 緩急の付け方がとても上手なんですよね。盛り上がるべきシーン、感傷的な気分になるべきシーン、ハラハラすべきシーンなどが定期的に交互に現れるストーリー構成になっており、それぞれのシーンにおいて効果的な音楽や映像演出を使うことで視聴者が心から感情を動かされるようになっています。本当に上手な演出ですねえ。



魅力的なキャラクターたち

 『リトル・マーメイド』には数々の魅力的なキャラクターが登場します。こういう魅力的なキャラクターをしっかり用意してるのも名作の証ですね。以下、各キャラクターの魅力について語っていきたいです。

アリエル

 言わずと知れた主人公です。先述の通り、過去のディズニー映画のプリンセスものと違い、『リトル・マーメイド』では明確にアリエルを主人公として目立たせるストーリーになっています。それゆえに、僕らはこのアリエルに大いに感情移入し同情しながら見ることができるんですよね。だからこそ、最後に彼女が念願かなってエリックと永久に結ばれるエンディングを僕は心から感動して見ることができるんですよねえ。

 なお、しばしばフェミニズム的な観点から、このアリエル以降ディズニーでは新しいタイプのヒロイン像が模索されるようになったと言われています。それはウォルト・ディズニー存命時代のディズニー・プリンセスを問題視するフェミニストの意見を受けての変化だとも言われています。過去のブログ記事で述べた通り、僕個人はフェミニズム的な観点でのかつてのディズニー・プリンセス批判にあまり賛同してないのですが、それを抜きにしてもアリエル以降ディズニーのヒロイン像が大きく変化したとはあまり思えません。プリンセスが気丈に自身の主張を述べるシーンは『シンデレラ』にも見られますし、いわゆる「強い女性」的なディズニーヒロインは『わんわん物語』のレディーや『ビアンカの大冒険』のビアンカ、『コルドロン』のエロウィー姫にも見受けられます。*3

 確かに、アリエルも父トリトンと対立したり、愛するエリックと結ばれるために自ら積極的に動くなどの姿勢が見られますが、これを今までのディズニー映画の流れとは大きく違う革新的なキャラ設定として捉えちゃうのは、むしろそれ以前のディズニー映画を馬鹿にしてると感じます。別に、アリエルの登場前からすでにディズニー映画はフェミニズムの批判にも耐えうるようなヒロインを描いてきてるし、世間が思ってるほど昔のディズニーは「ジェンダー観に問題がある」訳でもないです。昔のディズニー作品に対して「ジェンダー観に問題がある」という偏見が蔓延ってるのは、世間のディズニーに対する蔑視感情や敵対感情によるところもあるのでしょう。僕は、世間のディズニーに対するこういう誤った偏見を積極的に是正していきたいと思っています。

 とは言え、アリエルのキャラクター設定がとても魅力的なことには変わりないです。人間界への憧れと夢を抱き、好きな人のために努力するアリエルのキャラは、まさに「王道ディズニー作品の主人公に相応しい」キャラクターだと思います。そんな彼女の夢が最後に報われるからこそ、『リトル・マーメイド』はディズニーらしい素晴らしい王道作品に仕上がってるんですよね。

セバスチャン&フランダー&スカットル

 『リトル・マーメイド』が素晴らしい点は、脇役がきっちり脇役としての分をわきまえたうえで魅力的なキャラクターになってる点だと思うんですよね。先述した通り、ウォルト・ディズニー存命時代のプリンセスものでは、『白雪姫』の小人たちや『シンデレラ』のジャックとガス、『眠れる森の美女』の妖精たちは、プリンセス以上の活躍を見せておりほぼ主役に近いとすら言えます。それに対して、『リトル・マーメイド』の脇役であるセバスチャンやフランダーやスカットルは終始アリエルのそばについていながらも決してアリエルより出しゃばらないんです。ちゃんと物語の中心人物はアリエルのままになってます。

 かといって、『コルドロン』のパーティメンバーのように全く活躍しない訳でもないです。むしろ、セバスチャンなどは物語の展開において欠かせない役割を果たしています。アリエルの秘密をトリトンに話しちゃったり、ミュージカルシーンでの音楽を担ったり、ルイとの追いかけっこコメディを披露したりするなど、ちゃんと「存在意義」の感じられる魅力的な脇役となっていることがうかがえます。終始アリエルの味方となるフランダーや、ギャグ担当のスカットルなども脇役として良い味を出してます。これらの魅力的な「名脇役」の存在が『リトル・マーメイド』をさらに面白くしてくれてるんだと感じます。

トリトン

 『リトル・マーメイド』ではアリエルと父トリトンとの確執が描かれている点も魅力の一つでしょう。こういう「親子の対立」はディズニー映画では何度か描かれているテーマであり、本作品でもそれが上手に描かれていると思います。アリエルの身を心配する余りに娘を縛り付けてしまうトリトンが最後に改心し、アリエルを人間にしてあげるシーンは本当に感動します。

 束縛の強い親が子供の自立と自由を認めるように変わるシーンが僕は本当に好きなんですよねえ。トリトンの父親としての立派さとダメさがどちらもしっかりと描かれてるからこそ、アリエルとの確執がリアリティのある親子対立に見えるんですよね。そういう点でキャラクターの描き方が上手いと思います。

ヴィラン

 本作品のアースラも名悪役ですね。アリエルに取引を持ち掛ける際の動きがいちいち嫌らしくて魅力的です。本当に、「主人公を誘惑して騙す悪い魔女」って感じの言動なんですよね。「怪しい誘惑的な口調でおかしな壺とかを買わせる詐欺師」って感じのキャラクター設定がされています。普通に狡猾で抜け目ない性格で、綿密な計画を練って王位簒奪を企むタイプの悪役なのも良いですね。頭の良い悪役って好きです。

 アースラだけでなく手下のフロットサムとジェットサムもなかなかに優秀な働きを見せています。この点は、「ディズニー・ヴィランズの手下は間抜け」というディズニーの伝統には合わない珍しいキャラ設定だと思います。しかも、アースラもわりとこの手下のことは大事に思ってるらしいんですよね。だからこそ、終盤でアースラはこの手下のウツボ二匹が死んだことに怒って巨大化したわけですし。

 こういうディズニー映画にしては珍しいキャラ設定がヴィランズに対して為されており、その点に新鮮味を感じたりもします。そういう点も含めて、魅力的な名悪役に仕上がってると思います。

エリック

 エリック王子もしっかりと魅力的なキャラクターに仕上がってますね。特に、終盤でアースラを倒す活躍を見せるなど、なかなかに格好良いプリンスキャラとして描かれています。自分を助けた女性を探し求めるロマンティックさも個人的に萌えポイントですね。嵐の中、飼い犬のマックスを助けに行くなど、序盤から格好良いシーンが描かれているので、終盤の活躍も決して違和感のない展開になってるんですよね。格好良いです。


海の映像の綺麗さ

 僕は、海中世界の映像が昔から大好きなんですが、そんな僕にとって『リトル・マーメイド』の世界観はとてつもなく魅力的です。かなり綺麗で神秘的な海の映像が本作品では見れるんですよね。特に"Part of Your World"をアリエルが歌うシーンでの海の映像の綺麗さは異常だと思います。光の入り具合とかがめちゃくちゃエモいです。こんなにも綺麗な海の映像を見せてくれるディズニーの技術に感心します。

 前の記事で述べた通り、この頃からディズニーでは映像にCGを活用するようになってましたが、『リトル・マーメイド』の海の映像の綺麗さはそのようなCG技術の賜物だと思います。水の独特な揺らぎや光の見え方などがとても綺麗に描かれています。こういう美しい海の映像の綺麗さを何度でも眺められる点も、『リトル・マーメイド』の魅力の一つだと思います。


偉大な名曲たち

 先述した通り、『リトル・マーメイド』ではアラン・メンケン&ハワード・アシュマンという黄金コンビの力によってたくさんの名曲が生まれています。最初から最後まで存分にミュージカル要素を味わうことのできるミュージカル映画の傑作となっています。特に有名なのは"Under the Sea"と"Part of Your World"の2曲でしょう。カリブ海風のアップテンポで楽しくなるメロディが特徴的な"Under the Sea"も、とにかくエモくて感動的な豪華なバラードとなっている"Part of Your World"もどちらも文句なしの名曲でしょう。何度でも聞いていたくなる曲だと思います。

 個人的に、"Under the Sea"は中盤以降の韻を踏んだ歌詞(英語版)が特に好きですね。この韻の楽しさゆえに僕はカラオケで何度でもこの曲を歌ってしまうんですよねえ。ハワード・アシュマン氏のセンスの良さが光る歌詞だと思います。この曲をセバスチャンが歌うシーンでたくさんの魚が集まって踊るカラフルな海の映像もめっちゃ好きです。音楽もとにかく楽しい名曲です。アカデミー歌曲賞を受賞するのも納得のクオリティでしょう。

 "Part of Your World"はこの『リトル・マーメイド』の主題歌とも言うべき曲ですね。作品内では何度もこの曲が流れてきます。序盤でアリエルが歌うシーンは海の映像の綺麗さも相まって、感傷的な気分に浸れる名シーンだと思います。そして、アリエルが「アーアーアアー」と発声練習っぽくこの曲を歌うシーンも良いですね。エモい歌のメロディが『人魚姫』の世界観に合っています。個人的には、ラストの結婚式のシーンでこの曲が流れるところも大好きです。本当に大団円って感じのハッピーエンドで幸せな気持ちになります。そんな幸せな気持ちを存分に盛り上げてくれる名曲でしょう。

 また、受賞こそ逃したもののアカデミー歌曲賞にノミネートされた"Kiss the Girl"もかなりの名曲でしょう。セバスチャンの作り出す良い感じの「ムード」が本当に好きです。この曲に合わせてエリックとアリエルがキスしそうになるシーンは本当にワクワクしながら見ていられます。ボキャ貧なので「エモい」としか表現できないのですが、とにかくエモい名曲だと思います。

 本作品には名ヴィランズ・ソングである"Poor Unfortunate Souls"も流れています。アースラの怪しさや気味の悪さが秀逸に表現された名曲だと思います。聞いていてゾクゾクするような怪しさが全面に漂っています。こういうヴィランズ・ソングは魅力的だなあ。余談ですが、アースラがこの歌を歌い終わった後でアリエルが人間に変身するシーンの緊張感ある演出が僕は好きです。BGMで流れるこの曲の緊迫感と、動きの激しいアニメーション映像のおどろおどろしい雰囲気が良い味を出してるんですよね。

 その他にも、本作品では"Daughters of Triton"や"Les Poissons"などの良曲がいくつも流れてきます。こういう劇中歌が大量に盛り込まれてることで、「ミュージカル映画としてのディズニー映画が完全復活したなあ」と実感することができます。また、本作品では劇中歌以外のBGMによる演出も上手いです。先述の通り、物語の展開に合わせて上手く緩急のあるBGMを付けられてると思います。


とにかく文句なしの名作

 ここまで、『リトル・マーメイド』の魅力を語ってきましたが、とにもかくにも本作品は文句なしの名作だと思います。マイナスポイントが見当たらないので、終始一貫して褒めまくる感想記事しか書けません。誰の目から見ても明らかな「ディズニー・ルネサンス」の完全なる到来を告げる作品にふさわしい傑作でしょう。歴史に残る名作として扱われるのも当然だと思います。僕もめちゃくちゃ大好きな作品です。とにかく素晴らしいとしか言いようがないです。








 以上で、『リトル・マーメイド』の感想記事を終わりにします。今回も長くなってしまいましたね……。次回は『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』の感想記事を書く予定です。それではまた。

*1:ディズニーの映画ではないです。

*2:まあ最近の歴史研究では、こういう中世暗黒史観は古い見方として廃れてるらしいですけど。

*3:脇役キャラや子供キャラまで含めればもっとたくさんいます。