tener’s diary

てねーるのブログ記事です

【ディズニー映画感想企画第10弾】『メロディ・タイム』感想~戦後の衰退を感じさせる作品~

 ディズニー映画感想企画もとうとう10記事目を迎えました。この記事では『メロディ・タイム』の感想を書こうと思います。『メイク・マイン・ミュージック』と似たような作風で、『メイク・マイン・ミュージック』同様ディズニー映画の中ではかなりマイナーなほうの作品でしょう。

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【基本情報~再びの『ファンタジア』風短編集~】

 第二次世界大戦終結後、ディズニー・スタジオは『メイク・マイン・ミュージック』(1946年公開)や『ファン・アンド・ファンシー・フリー』(1947年公開)などのオムニバス形式の長編アニメーションしか作らなかったことですっかり評判を落としてしまいます。この時期には、ウォルト・ディズニー氏自身の関心もアニメーション制作以外の方向に向いていたみたいで、『あざらしの島』のようなドキュメンタリー映画を製作してたりしてます。

 『メロディ・タイム』はそんな戦後の衰退期のディズニー・スタジオが1948年に公開した10作目の長編アニメーション映画です。これまでの記事で述べた通り戦時中のディズニーは長編アニメーションの制作をすっかりやめていたのですが、戦争が終わるとようやく久しぶりの新作長編アニメーション映画として『シンデレラ』の制作を開始します。しかし、長い間スタジオでは長編アニメーションを作っていなかったので『シンデレラ』の制作には時間がかかり、ディズニー・スタジオは『シンデレラ』が完成するまでの「時間稼ぎ」兼「製作費稼ぎ」として戦後しばらくの間は短編オムニバス映画を公開し続けたのです。『メロディ・タイム』もそんな作品の一つでした。

 『メロディ・タイム』は、『メイク・マイン・ミュージック』と同じく、音楽に合わせてアニメーションが展開される『ファンタジア』風の短編集になっています。『メイク・マイン・ミュージック』や『ファン・アンド・ファンシー・フリー』で凋落したディズニーへの評判は、同じような短編集であるこの作品の公開後もやっぱり覆らず、『メロディ・タイム』は興行的にも失敗に終わっています。戦争が終わってもディズニーは依然として衰退したままだったのです。ディズニー・アニメーションが再び過去の栄光を取り戻して世間から好評を博するようなるには、当時制作中の『シンデレラ』の完成を待たなければなりませんでした。





【個人的感想】

総論

 『メイク・マイン・ミュージック』と似たような作風である本作は、正直言ってそのクオリティも『メイク・マイン・ミュージック』と似たような感じです。つなぎのシーンは一応あるのですが全然凝ってなく、単に「色んな短編を寄せ集めてみた」という感じが強く出ています。個々の短編の内容もピンキリでわりと眠くなる話もあります。

 以下、各短編の感想です。


冬の出来事

 前半は音楽に合わせて男女がスケートするだけなので退屈なのですが、途中で氷が割れてからはちょっと緊迫感ある展開になる。でもそれだけですね。歌は結構好きですが、ストーリーはそんなに面白くない作品ですね。


クマンバチ・ブギ

 コルサコフ氏作曲の有名な『熊蜂の飛行』をアレンジしたアップテンポな曲調に合わせてハチが飛び回る作品。この作品もこれと言ったストーリーはないんだけど、個人的には音楽の雰囲気から漂う緊迫感とハチのカオスなアニメーション演出が上手く合っているのでまあまあ好きですね。こういう目まぐるしく移り変わる映像と音楽の合わせ技は好きです。


リンゴ作りのジョニー

 アメリカでは有名な伝説的開拓者のジョニー・アップルシードの伝記アニメーションです。アメリカの初期の開拓時代の雰囲気が感じられて多少勉強にはなるんですが、ぶっちゃけ面白くないです。いまいちジョニー・アップルシードの偉大さが伝わらないんですよね。正直言って、彼がどうして作中で偉人扱いされるようになったのか全然分からない。気の良さそうな青年が単にリンゴの木を植えまくっただけで、これと言った分かりやすい活躍シーンや歴史ドラマがあるわけでもないので退屈な作品です。


小さな引き船

 タグボートのトゥートの成長物語。一応、まあまあ見れる面白さはあるけどやっぱり「普通」な作品です。序盤で主人公のトゥートのしでかしたことが結構酷すぎて、その点での意外性はあるのでそこだけは面白かったです。


丘の上の一本の木

 ストーリーのない芸術作品っぽいアニメーション。一本の木の映像がひたすら映し出されるだけで、芸術的なのかもしれないけど自分にはちょっと退屈です。こういう芸術色の強い短編も入っている点は確かに『メイク・マイン・ミュージック』や『ファンタジア』と近いものを感じます。僕はそういうの好きじゃないです。


サンバは楽し

 『三人の騎士』以来の登場となるホセ・キャリオカやアラクアンがドナルドと一緒にサンバで踊るシーン。実写との合成になっています。正直言うと、『三人の騎士』で見たようなシーンの焼き直しっぽくて新鮮味には欠けます。とは言え、『三人の騎士』と同じくそれなりに楽しい演出になってるので僕はまあまあ好きですね。サンバの音楽はやっぱり楽しくて良いですね。


青い月影

 テキサスの有名なカウボーイであるペコス・ビルのお話。これは比較的面白いです。それなりに笑えるコメディに仕上がってます。特に、恋人のスルーフット・スーが何度も飛び跳ねるシーンは絵面がかなりシュールで笑える。ペコス・ビルがリオグランデ川やメキシコ湾などアメリカの色んな地形の起源になっている話も、昔ながらのアメリカの民話っぽさを感じるので僕は好きです。『メロディ・タイム』の短編の中ではこれが一番好きかな。


やっぱりイマイチな作品

 『メイク・マイン・ミュージック』と似たような作風ですが、個人的にはどちらかというと『メロディ・タイム』のほうがイマイチだなあと感じています。いやまあどっちも比較的「微妙」な作品であることには変わりないんですけど……。

 『メロディ・タイム』のほうが『メイク・マイン・ミュージック』よりもストーリーのちゃんとある短編が多くて、その点では『メロディ・タイム』のほうが良いのですが、その肝心のストーリーは『メイク・マイン・ミュージック』よりもあまり面白くないものが多いんですよね。ぶっちゃけ『青い月影』以外のストーリーはそんなに面白くないです。

 まあ、どっちにしても『メイク・マイン・ミュージック』同様にやっぱり微妙な作品だなあという印象の拭えない映画ですね。依然としてディズニーが衰退期にあることを実感できる映画だと思います。

 余談ですが、『メロディ・タイム』は『リンゴ作りのジョニー』や『青い月影』などアメリカ史に関する伝説・民話を集めた話が多かったのがちょっと印象的でした。まあ多いと言ってもこの2作だけなんですけど、どちらの作品もこの映画内の他の短編に比べるとやや尺が長めなんですよね。僕はアメリカ史好きなので、個人的にこの点だけは嬉しかったですね。とは言え、それでも『リンゴ作りのジョニー』のほうはあまり面白くなかったのですが……。







 ということで、『メロディ・タイム』の感想記事を終わりにします。次回は『イカボードとトード氏』の感想記事を書く予定です。それではまた。